BBQ CHICKENS / Fine songs , Playing sucks (2003.10.22)
ハイスタ(現在活動休止中)及び原爆オナニーズ(現在活動中)の横山健氏が率いるファストコアバンド。そのカバーアルバム。
HMV及びタワレコ、双方のサイトで「カバーアルバムの名盤」と賛美してます。「大真面目にふざけた」という、どこかで用意されていたと思われる共通のキーワードまで使用して。僕はそれに対し、「半分賛成。半分否定」という立場を取ります。
まずはカバーアルバムとして否定する立場から。もしSHAM69やNIRVANAやマドンナのファンの方が、「どんな風にカバーされているんだろう?」と興味を持って聴こうとするのは、止めた方がいいのじゃないでしょうか。SHAM69の「IF
THE KIDS ARE UNITED」は、前奏のギターとサビしか解らないし、NIRVANAの「TERRITORIAL
PISSINGS」はサビが原曲とずいぶん違う。PRETTY WOMANとEVIL DICKに至っては10秒くらいの演奏のあと「プリティ・ウーマン」と一言だけ吐き捨てて終わってしまう。
正直、「何だこりゃ?」という出来あがりだと思います。原曲が跡形も無い。文字どおり、バーベキューで焼きすぎたチキン。
理由はですね。カバーをする側(この場合、当然BBQ
CHICKENS)の音楽性が速くて短すぎる。例えば、DISCLOSEがDISCHARGEをカバーするのは、「速い」「短い」という音を出すバンドが同じ音のバンドをカバーしたのだから(最早コピーに近い)、速い、短いでも問題ないのですが、さすがにBBQ
CHICKENSが「やや気だるいテンポ」「単調な電子音」の演奏であるマドンナの「LIKE
A VIRGIN」をカバーするのは無理がありすぎたようです。「ライク ア ヴァージン!」と叫んでいるところしか解らないし。その叫びで処女膜が破れそう。
だから、「カバーの名盤」という言い方に賛成できないわけです。これが良いカバーだと感じるのは、カバー元をあんまり知らないんじゃない?と。これがいいアルバムだと思う人はBBQ
CHICKENSのファンがほとんどを占めるのではないでしょうか。
だけどですね。僕はこのアルバムを傑作だと思ってますよ。めちゃくちゃ痛快です。
ここ最近の日本の音楽業界ですが、カバーがブームとなっております。流行りが明確になってから手を出すつんく♂さんが、そろそろモーニング娘。にカバーシングル出させるのも時間の問題なほどです(実は「ココナッツ娘。」はモーニング娘。のカバーでデビューしてるんですけどね)。
僕はどこかの音楽テキストで触れたと思うのですが、カバーは「そのバンド(歌手)のファン」と「原曲を知っている人」の両方が楽しめるので、ライブ等で盛りあがるのは当然と思ってます。ましてや、それをCD化して発売すれば、単純にマーケットを広げることが出来るわけで、それは売上げを伸ばす安易な方法であると。カバーブームというのは、売り手と買い手、どっちが需要としたのか。
そう言った風潮に対してですね。僕にはBBQ CHICKENSが一切媚びないカバーアルバムを出してきたと思えてならないのです。10秒程度の演奏のあと「プリティ・ウーマン」と一言だけ吐き捨てて終わってしまう、という痛快なカバー。すげえかっこいいよ。ここまでやられてしまうと、「カバーはリスペクトが云々・・・」などという僕の主張など、小さな問題となって霞んでしまう。
むしろ、「自分たちが好きなように、自分達流にカバーしたんだ、売れ筋とかウラスジとか関係ねえ」という次元なので、従来のカバー集などより強烈なリスペクトが込められている、と言えるかもしれません。カバーしたら亜麻色の髪の少女がヒゲモジョマッチョの大男になったっていいじゃないか。それがBBQ
CHICKENS流ならば。
「カバーの名盤」という定義の名盤ではないけれど、「カバーだから売れる」「カバーだとマーケットが広がる」という理論を打ち砕いた傑作であり、怪作。あくまでBBQ
CHICKENSのファンのためだけのカバーアルバムです。ファンを大事にするってのは、こういうことかもしれません。
それでも、「もっとコアな人達はもっとカバーとは思えないカバーやってるんじゃないの?」と思わせてくれるのが、音楽の奥深く、面白いところ。所詮、僕のアンテナに引っかかるのは全部有名なのだから。
Fine songs , Playing sucks 「素晴らしい歌を下品に演奏すること」(だと思う)
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