update2004.10.30

BUSINESS / HARDCORE HOOLIGAN  (2003.8.26輸入盤)

 20年以上昔から活動しているイギリスOi!パンクバンド。

 まずはアルバムの中身から簡単に紹介しましょう。タイトルから解るとおり、もうアルバム全編通して英国サッカーを称える内容に終始してます。ベッカムを褒め称え、マラドーナはクソと歌う。曲タイトルから言って"ENGLAND 5, GERMANY 1"なんて妄想じみたものまであるから。六甲おろしをカバーするほどの阪神ファンであるゲルググさんもここまで酔狂な曲は書かないわな。
 まあそれだけ言ってしまえば「Oi!パンクとベッカムファンにオススメです★」と文章を締めても良いわけですが、「ロックは社会を写す鏡」と信じ、ビンラディン一派は良いロックを聴いてないのがテロの原因だと考える僕としては、このアルバムを通して日本のロックと国際政治について書いてみようと思います。ほな行きまっせー。




 日本のロックというのは、基本概念は海外から輸入したものです。解り易い例を挙げれば日本にだってパンク、スカ、それぞれのシーンはあったのに日本国内ではそれぞれのシーンがクロスオーバーすることなく、スカパンクという概念が海外で発生してからそれをまた輸入したことが挙げられますし、ロックの話じゃないですがHIP-HOPというカルチャーをどういう訳か音楽ジャンルとして輸入したことなどもその一例でしょう。
 表面的な音を輸入するのは簡単です。それは現状として海外バンドを真似たバンドが多いことから解ると思います。しかし言語の壁もあって、精神面は完全な形で伝わってこなかったんじゃないでしょうか。

 その一例として、このBUSINESSの昨年リリースされた音源を紹介したいと思います。タイトルずばり、HARDCORE HOOLIGAN(ハードコア・フーリガン)。

 日本では「フーリガン」という単語は日韓ワールドカップ直前の報道の結果「フットボール(サッカー。英国的表現を使いたいので、こう表記します)の熱狂的ファン」という認知が広まったと思います。それはそれで正しい認識なのですが、「フーリガン対策」という言葉が先行した結果、フーリガンの背景に「フットボールは国家の威信を賭けたもの」という価値観があるという説明がなされた報道は少なかったように記憶しています。
 もちろん全てのフーリガンがそうではないと思います。例えば特定のクラブチームを熱狂的に支持する人もいるでしょうし、それこそアジアカップの中国のように「日頃の不満を晴らすために暴れる場を求めてるんじゃないのか」と推測・解釈できる存在も多いことでしょう(アジアカップ後にも重慶で「役人が市民を殴った」というデマによって民衆暴動があったという報道がありました)。そのようなこともあって、おそらく全てのフーリガンを一般化することはできないと思われますが、一方で国家の威信という価値観を持ったフーリガンがいるのもまた事実じゃないでしょうか。

 僕もここからは残念ながらそれほど詳しくないのですが(というより自分の認識や知識に自信があまりありません)、英国のフーリガンの元祖はパンクスの一派、スキンズであったそうです。
 スキンズとは「スキンヘッド」という単語から解るとおり頭を丸坊主にした英国の若者の総称で、日本語の「ヤンキー」「暴走族」のような使われ方をする単語です。スキンズがパンクスの一派、と書くのはもしかしたら僕の認識の不足があるかもしれません、ちょっと微妙なところです。

 少し曖昧な部分を含んでしまいましたが、ここで一番指摘しておきたいことは、「Oi!パンク」という一つの音楽ジャンルに国家威信をかけたフットボールなどが絡む点です。さらに言えば、その国家の威信からナショナリズムが絡んできて、なおかつそこには白人至上主義、人種差別主義、あまつさえネオナチなどの政治思想まで絡んでくる点です。




 Oi!に限らず、海外のバンドや音楽とかって政治信条とかその国の世相反映とか多い。

 日本では音楽、特にロックにロック以外の要素が絡むことはあまりありません。せいぜいファッションくらいです。あとはメロコアキッズがスケボー好きとかそれくらいかな。政治思想が強い(パンク)ロックはクラストとかあるにはあるんですが、今これ読んでる人のほとんどが「クラストって何?」とか思った人が大部分であるほど絶対数としてごく少数派です。
 これって、日本人が自己主張がない国民性、他国を意識した政治的なセンスが足りないと言われることにも関連ありそうですよね。普段の行動に自分の政治ポリシーとか意識しないじゃん。だって日本は平和だもん。日本にはマリリン・マンソンいねえもん。
 だからこそ、リスナーにとって聴く音楽に右とか左とか韓流ブームとか靖国神社とか関係ないのが普通なんです。個人的には好きなんですがきっとコアな方には批判が多いであろうOi!パンクバンドSAの"MATCHLESS ATTACK!"のジャケットって軍服着てすごいナチス臭いですけど(日本人がこれやるのどうよと思うけど)、ほとんどのリスナーはそんなん無視しちゃうよね。

 ただ、日本という国は現在、複雑な国際情勢の真ん中へ向かっています。日本が国連の常任理事国に入ろうとしていることや、イラクで復興活動を行っていることなどを考えると、国際社会のなかで重要なポジションを占めるようになったと言えます。
 そうすれば、人々は次第に国際的な見地に立った政治というのを意識していくと思います。国家に友人はいない、という名言を身に沁みて覚え、地球市民という頭の悪い妄想が打ち砕かれる。テレビ朝日の言うことを鵜呑みにする人は減るでしょう。

 日本が変われば。音楽も変わる。その日本の世相を反映し。

 その結果、日本にもこのBUSINESSのようなバンドが登場するかもしれません。バンドが、音楽だけでなく政治信条を持って活動する。それがフットボールやナショナリズムを絡めた本格的に輸入されたOi!パンクとして括られるか、日本が独自に生み出したロックとなるか。楽しみなところです。音が楽しみだ、文字通り音楽なわけ。個人的には「味噌カツは美味い」をひたすら主張する名古屋メロコアムーブメント(ミソカッツ・ハードコア・パンク。味噌コア)とか出てくると面白いなあと思います。
 こんだけ話を広げといて、最後はダジャレでオチがつきました。

 ロックは。社会を写す鏡です。





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