update2004.9.18

FALL OUT BOY / TAKE THIS TO YOUR GRAVE  (2003.5.6輸入盤)

 アメリカ・シカゴ出身の4人組みポップパンクバンド。クールな青いジャケットがインパクトある2ndアルバム。
 しかしこのHMVレビューは笑えるなあ。「いまいちパッとしなかった前作」なんて挑戦的なフレーズがこんな所で出てくるとは、やっぱり外資系企業は一味も二味も違うね。しかもこんな言葉で紹介された理由はきっとここの意見が理由かなと思います。
 ・・・て、同じHMVサイト内じゃん。まあ実際にその前作"Fall Out Boy's Evening Out With Your Girlfriend"は商品として本当にぱっとしないんですけど(笑)、それでも良い部分もあるので僕もフォロー的に書き込んでみました。

 とまあ、のっけから1stアルバムと2ndアルバムの対比から始まりましたが、今日はこのアルバムを通してロックアルバムにありがちな「1stアルバムが最高傑作となりやすい」という現象について僕の考えを述べ、そのうえでこのアルバムについて書いていきたいと思います。ちょっと前半部の方が長いですが、お付き合い頂ける方はぜひお読みください。



 「ロックバンドの1stアルバムは最高傑作になりやすい」。

 世の中、より正確にはロック音楽マーケットにはこんな傾向があるように感じます。もちろん、すべてのロックバンドがそうではありませんが、メインストリームであればあるほど、この傾向は非常に強い。
 何故こうなるかという理由を最初に言ってしまえば、消費者に「これがこのバンドだ!」といった印象を大きく与える1stアルバムを越える2ndアルバムを作ることは非常に難しい、という理由です。逆の観点では、評価が悪い2ndアルバムはその前の1stが売れすぎた、高い評価を得すぎたということです。
 ―――「ロックバンドの1stアルバムは最高傑作になりやすい」。これに幾つか言葉を補えば「1stアルバムでブレイクしたメインストリームのロックバンドの1stアルバムは最高傑作になりやすい(なぜならそれを越える2ndを作るのは非常に難しい)」、ということになります。

 東南アジアの呪術師が早口で魔法でも唱えてるような強烈な1stアルバムで登場したAUTHORITY ZEROは2ndの"ANDIAMO"という超駄作で自らの権威を0にした。Drive-Thruより「次のNEW FOUND GLORYはこいつらだ!」とプッシュされたMIDTOWNの(バンドとしてはたぶん3枚目だけど)メジャー2ndである"FORGET WHAT YOU KNOW"は「そのタイトルは言い訳ですか」と問い返したくなるクソアルバムだった。
 ここで留意してもらいたいのは、僕がここで「酷いアルバムだ」と言ってる理由とはあくまで「その前のアルバムと比べると」という比較の話だということであり、これを現す便利な単語を使えば「主観」です。感想もレビューも音楽テキストも全部主観だし、それが全てだしそれで問題ない。
 そして世間の評価というものは主観の集合体であり、それによって数値化された合計数が「客観」になる。僕は客観とは数字で現せるものだと常に思っています。「自分は客観的に考えることが出来る」なんて堂々と主張するヤツは最低の嘘つきかただの勘違いの馬鹿だろう。

 あるアルバムがリリースされ、複数の人間が買う。そして「賛成」「反対」派が誕生する。それぞれ主観の集合体である客観的意見だ。
 僕もこのサイトで何度も「このアルバムは賛否両論だ」なんて言葉を使うけど、散々使っといてこんなこと言うのも何ですけどどんなアルバムでもそうなるのは当たり前の話なんですよね。使う側の言い訳をここでちょっと書いておくと、この言葉を使って言いたい状況をより正確に記すと「このアルバムは賛成と反対がほぼ5対5だ」という感じです。ちなみに日本人はその気質か、おそらく「否」のが多いであろうアルバム(あえてイニシャルトークするとGDのWとか)も「賛否両論」という言葉を使いたがります。うん、ジャパニーズ美徳。



 さて、ここでFALL OUT BOYの2ndアルバム"TAKE THIS TO YOUR GRAVE"の話に戻るのですが、FALL OUOT BOYはこの2ndアルバムで躍進したように言われます。事実、タワレコやHMVでのプッシュもあって輸入盤が5000枚売れ(これが多いのかどうかはちょっと判断できませんが)日本盤リリース、ポップパンク界のメインストリームへの仲間入りと言える存在になりました。

 つまり、2ndアルバムが評価され、1stアルバムが評価されなかった、ことになります。

 実際、1st"Fall Out Boy's Evening Out With Your Girlfriend"は確かにインパクトなく、聴かせどころであるはずの高音部の伸びでヴォーカルが貧弱な印象が強く、全体に音も薄い。編曲もなんだかツギハギだ。でもその1stを「これがFALL OUT BOYか!すげえかっけぇー!」と思う人にはポップに昇華したこの2ndこそ「否」になるんじゃないだろうか。
 それでも単純にセールス的に弱かったこともあって1st支持派の絶対数は少ない。客観的には少数派だ。
 繰り返すけど、どんな音源もやっぱり賛否両論であります。そして世間での評価が高いように感じられる、言い換えれば「1stアルバムが最高傑作にならなかった」あとにリリースされたこの2ndアルバムは、「1stを買った人」より「1stを買わずに2ndを買った人」のが多かった、ということです。

 僕は2nd"TAKE THIS TO YOUR GRAVE"について、ツギハギ編曲がなくなっただけで音楽性はそれほど変わってないと思います。実際、2ndの10曲目"CALM BEFORE THE STORM"は1stにも収録されていたもののリテイクですが、別にこのアルバム中で浮いた存在でもなく、さらに1stの同曲と比べると演奏やヴォーカルの技術向上、レコーディングが器用になったなぐらいの感想しか抱かないと思います。
 そしてこれらの部分はロックとしての価値じゃなくロック商品としての価値の部分です。1stよりここまで2ndが支持されるのはただ単に商品として売れただけじゃないのか。

 もちろん数字で売れたということは評価すべきことですし、評価されるべきだと思います。でもそれは評価の1要素にすぎないってことは強調したいわけでして。決して僕は「1st聴いてから2nd評価しろ」なんて高みに立った言い方をしたいわけじゃなく、感想を抱くのにリリース音源全部聴かなきゃ駄目だとか、全てのライブに行かなきゃバンドのことは語れないとか、そんな価値観を持ってるわけでもありません。
 ただ、まるで全ての人の主観のように「FALL OUT BOYは1stよりは2ndのほうが優れている」みたいになる雰囲気はあまり好きではありません。
 「いまいちパッとしなかった前作」なんてのは主観、後に日本盤が再販されるほど売れたという現象は客観。僕にとって音楽聴くうえで大事なのはどっちかってのを象徴するアルバムでした。



 好きな曲は"4. SATURDAY"かな。

 ちなみに彼らの公式サイト(下のリンク先。リンク先音あり注意!)のディスコグラフィのページにデモテープとデモテープのCD盤とこの2ndアルバムは紹介されてるのですが、1stは紹介されてません。飯島愛のAV時代のように無かったことにしたいのでしょうか。

公式サイト:http://www.falloutboyrock.com/ ※リンク先音あり注意




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