■ レビュアー:榎本
こないだテレビでやってたのを観た感想も含めて。こりゃ映画「タイタニック」的アルバムですよ。
有名なもの、ヒット作などは何でもそうなんですけど、タイタニックってアンチな人多いですよね。ほら、女性や子どもが「良い映画だった」「泣けた」って言っただけで拒否反応起こす層っていますよね。泣かなかった、泣けなった自分にアイデンテティ感じてるタイプの人。このサイト見てる方に伝わりやすく言うなら、特に明確な理由はないけど何となくシャカラビ嫌いとか言ってる工業高校の男子生徒みたいな。
タイタニックに関して言えば、上記の無駄に自信家な方々以外にも、おそらくレオナルド・ディカプリオとケイス・ウィンスレットによるあまりにありがちな身分の違いのラブストーリーを主軸に置いた結果、どうも映画評論者の間で評判がよくなく、アカデミー賞でも酷評、それが一般に派生して評価が分かれたという感じだと思います。
だけどこの映画の本当の見所ってのはそんな陳腐なラブストーリーじゃなく、タイタニックの悲劇にまつわる様々なエピソードが散りばめられている(本当かどうか怪しいエピソードがあるのも確かですけど)ところじゃないですかね。僕はこの小さなエピソードの積み重ねとして観るとすごいいい映画だと思います。タイタニック。
ここで、グリーンディに話を戻します。今作の最大の売りは雑誌でもレコードショップの宣伝文句でも大量にみた「組曲的要素」という部分でしょう。
トラック2"JESUS OF SUBURBIA"、トラック12"HOMECOMING"はともに9分を超す長さを誇り、さらに「家(HOME)」というテーマを持って展開する、二つで一つのストーリーとなってます。それは確かに聴き応えあるものです。
けど僕はこの部分、グリーンディが組曲の構成で曲を出したとかまったく興味が持てませんでした。正直ロックアルバムの楽曲内に組曲的な曲があるなんて今時珍しいことじゃないし、そんなに新鮮なものじゃない訳でして。10年以上前にアルバム一枚すべてを通して一つの物語とかあったしね。そのこと事態は、それをパンク畑、しかもポップスの領域に属すことも可能なほど世界的に売れているポップパンクバンドがやっただけのことですから。
ただ、それを以って「"AMERICAN IDIOT"は凡作だ」なんて言うつもりは全くありません。そんな評価の以前に、このアルバムの一つ一つの曲に僕が好きなグリーンディがあった。そこです。
要は、最初に引き合いにだした映画のタイタニックなんですよ。主軸以外に、僕はすごく気に入ってる部分がある、すごく細かいところの積み重ねがすごく良い。
いつか音楽テキストなりレビューなりに書こうと思ってたんですが、僕はグリーンディの前作"WARNING"が凄まじい勢いで無しだったんですね。だって今までのグリーンディじゃないもん。保守的と言われても構わない、あれこそ駄作でした。
今回の"AMERICAN IDIOT"は、いろんなグリーンディを含んでいるってのが感想として大きく上げられる点です。さらに一歩踏み込んだ言い方をすれば、前の言葉と矛盾するけど"AMERICAN IDIOT"は前作"WARNING"さえ含んでると感じるところも好印象の一因です。
進化し続けるグリーンディが新しい領域に踏み込んだとかまったく感じず。ただただ帰ってきたという感じです。
タイタニックのラストシーンは、その後の人生をしっかり生きてきたおばあちゃん(ベッドの横の写真をなぞるシーンは物理的には海に浮くはずのジャックが何故か沈んでいくシーンより良いシーンだ)がタイタニックに帰っていく、というものでした。僕にとって"AMEICAN IDIOT"はそんなそんな感じです。
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