update2004.12.29

GREENDAY / AMERICAN IDIOT  (2004.9.23日本盤)

 アメリカのポップパンクバンド、グリーンディのメジャー5枚目のアルバム。




 さて。今回は僕以外にも何人かの方にレビュー書いてもらえるようお願いしました。つまり複数人のレビュアーによるクロスレビュー形式になってます。
 レビュー掲載順はエツコさん、キイチさんと続き、そして最後に僕がいつもの調子で書いたものを掲載します。

 それでは、各レビュアーさんをそれぞれご紹介いたしましょう。

 エツコさんは昔からのグリーンディファン。全体的に洋楽が好きな方でして、ご自身のサイトでは僕がいつも書いているうるさいロック系以外にもエミネムなどのヒップホップについてのレビュー等も書かれてます。
 キイチさんはすでにご自身のサイトで"AMERICAN IDIOT"について書かれているにですが、当サイトのクロスレビューのためにまた別の視点からのレビューを書いて頂きました。またその他、GRRENDAYについてのレビューも豊富です。

 それじゃ、前フリはこんな感じでにして。本編が下にどんどん続きます。めったにないヴォリュームですけど負けずにどうぞ。くらえ、当サイト初のクロスレビュー。


■ レビュアー:エツコ (from MUSIC LIFE

1989年、インディ・レーベルLOOK OUTと契約しKERPLUNK!1039/SMOOTHED OUT SLAPPY HOURSをリリースしてから15年。
メジャーデビューアルバムDookieで初めてその名を知って以来、常に大好きなバンドの一位の座を占めているGreen Day。
3コードのキャッチーな音に歌詞は社会風刺が一杯のこのバンドは、洋楽どころか音と言うものにまるで興味がなかった私を『音楽』の世界に引きずり込んでくれました。3ピースと言うのもまた大好きなところ。名曲とされるBasket Caseでクレイジーな雰囲気の漂うメンバーの姿をはじめて見た時は大ショックを受けたほどです。(もちろん良い意味で)

ボーカルであるビリー・ジョーが『作るアルバム全てが新しい時代を意味する』とインタビューで話していた通り、メジャー進出ゆえのあせりやとまどいから解散説さえ流れたInsomniacも、脱パンク『良い曲を作ります』宣言が印象的だったWarningもその時代のGreen Dayが感じられるとても好きなアルバムです。

Warning以来4年ぶりになる今回のアルバム「American Idiot」。
アルバムタイトルにもなっているGreen Day節全開のAmerican Idiotから始まり、組曲なるものにも挑戦。 今までのアルバムでは聴く事のなかったような音を使ったり、十数年にわたる土台があってこその余裕さえ感じられるアルバムでした。
Green Day史上最高傑作との噂も納得。
メンバーの『前作よりも良いものを作りたい』と言う気持ちがアルバム随所に感じられます。
Green Day=パンクは当然ですが、ジャンルの枠に収めてしまうのはちょっともったいないかなと感じるほど。

悪ガキさが漂うデビュー当時からのメンバーの姿を見ていると、子供を持つ歳になりちょっと目尻にシワの入った姿もまたカッコ良く見えてしまうところ。
少年っぽさの残るビリー・ジョーのボーカルもますます磨きがかかったような気がします。

音楽は聴く人によって感想が違うのが当たり前。今回のアルバムで期待した音が聴けなかったと思う人がいても当然だと思います。
Green Dayファン歴10年以上の私には、American Idiotは聴けて良かったと感じる最高のアルバムでした。



■ レビュアー:キイチ (from Timeless Label

「これが彼らのゴールなのかもしれない。」



4年振りに届けられた新作『Amrican Idiot』は何とも壮大なアルバムになったものだ。

パンク史上初のロックオペラアルバム?
グリーンデイ初のコンセプトアルバム?

本人達が言ってるんだから正しいんだろうが、そんなのはこのアルバムのほんの一部分に過ぎないと思う。

このアルバムはそんなことに縛られて聴いちゃいけないアルバムだ。
そんな次元の作品じゃないと思ってしまうのは、ただ僕が彼らの大ファンだからなのだろうか?



アルバムを一通り聴き終わっての率直な感想は複雑なものだった。

1曲目の『American Idiot』を聴いているうちは良かった。
新鮮さは皆無、メロディだって彼らの技量からしたら目立って良いって程でもないけど、昔を思い出したかの様なパンキッシュなサウンドを聴いて、自然に頬が緩んだのは僕だけじゃないと思う。

「やっぱり、奴らは帰ってきた!!」

そして聞き終わった後に浮かんでいた言葉は、

「・・・とんでもないもん作ったな」

間違いなく駄作ではない。
しかし、自分の許容範囲を超える想像以上の作品だった。

良くも悪くも。

そして雑誌でのインタビューで書かれていた言葉を思い出した。
「もう、これ以上の作品は作れないかもしれない・・・」(ビリー)
その言葉はアーティストの宣伝文句かと思っていたけど、
アルバムを聞き終わった頃には妙に納得してしまった。



自分の中で「良い作品」「悪い作品」と簡単に片付けられない作品。

メロディがどうとかサウンドがどうとかってレベルじゃなく、グリーンデイの生き様をどう思うか?どう感じるか?とかそういう次元のアルバムの様な気がする。

なんでそう感じるかは自分でも分からない。
が、そう感じずにはいられない。

人間性がここまで見事に投影されている作品というのはなかなか出会えるもんじゃない。
これはパンクに限らずあらゆるジャンルで言えることだと思う。

パンク出身の彼らにとって、前作『Warning』は前々作『Nimrod』で失敗したパンクサウンドからの脱皮を見事に達成したアルバムだった。
が、今作はそういうのとはまったく次元が違う。
サウンド面でいったら、『Warning』もあれば『Dookie』もある。
今までやってきたサウンド面でのチャレンジなんて全部含んでしまっている。

アーティストにとって自己表現というのがもっとも重要なテーマだとしたら、グリーンデイは今作でそれを達成してしまった。
少なくともボーカルで作詞もしているビリーはかなりの部分を表現出来てしまったんじゃないのだろうか。

この次に彼らはアルバムを出す気になれるのだろうか?
まだ表現したいことがあるのか?
遣り残したことなんてあるんだろうか?

僕には今の時点ではあるように思えない。
それ程内容の濃い作品だと思う。



■ レビュアー:榎本

 こないだテレビでやってたのを観た感想も含めて。こりゃ映画「タイタニック」的アルバムですよ。

 有名なもの、ヒット作などは何でもそうなんですけど、タイタニックってアンチな人多いですよね。ほら、女性や子どもが「良い映画だった」「泣けた」って言っただけで拒否反応起こす層っていますよね。泣かなかった、泣けなった自分にアイデンテティ感じてるタイプの人。このサイト見てる方に伝わりやすく言うなら、特に明確な理由はないけど何となくシャカラビ嫌いとか言ってる工業高校の男子生徒みたいな。
 タイタニックに関して言えば、上記の無駄に自信家な方々以外にも、おそらくレオナルド・ディカプリオとケイス・ウィンスレットによるあまりにありがちな身分の違いのラブストーリーを主軸に置いた結果、どうも映画評論者の間で評判がよくなく、アカデミー賞でも酷評、それが一般に派生して評価が分かれたという感じだと思います。

 だけどこの映画の本当の見所ってのはそんな陳腐なラブストーリーじゃなく、タイタニックの悲劇にまつわる様々なエピソードが散りばめられている(本当かどうか怪しいエピソードがあるのも確かですけど)ところじゃないですかね。僕はこの小さなエピソードの積み重ねとして観るとすごいいい映画だと思います。タイタニック。




 ここで、グリーンディに話を戻します。今作の最大の売りは雑誌でもレコードショップの宣伝文句でも大量にみた「組曲的要素」という部分でしょう。
 トラック2"JESUS OF SUBURBIA"、トラック12"HOMECOMING"はともに9分を超す長さを誇り、さらに「家(HOME)」というテーマを持って展開する、二つで一つのストーリーとなってます。それは確かに聴き応えあるものです。
 けど僕はこの部分、グリーンディが組曲の構成で曲を出したとかまったく興味が持てませんでした。正直ロックアルバムの楽曲内に組曲的な曲があるなんて今時珍しいことじゃないし、そんなに新鮮なものじゃない訳でして。10年以上前にアルバム一枚すべてを通して一つの物語とかあったしね。そのこと事態は、それをパンク畑、しかもポップスの領域に属すことも可能なほど世界的に売れているポップパンクバンドがやっただけのことですから。

 ただ、それを以って「"AMERICAN IDIOT"は凡作だ」なんて言うつもりは全くありません。そんな評価の以前に、このアルバムの一つ一つの曲に僕が好きなグリーンディがあった。そこです。

 要は、最初に引き合いにだした映画のタイタニックなんですよ。主軸以外に、僕はすごく気に入ってる部分がある、すごく細かいところの積み重ねがすごく良い。
 いつか音楽テキストなりレビューなりに書こうと思ってたんですが、僕はグリーンディの前作"WARNING"が凄まじい勢いで無しだったんですね。だって今までのグリーンディじゃないもん。保守的と言われても構わない、あれこそ駄作でした。
 今回の"AMERICAN IDIOT"は、いろんなグリーンディを含んでいるってのが感想として大きく上げられる点です。さらに一歩踏み込んだ言い方をすれば、前の言葉と矛盾するけど"AMERICAN IDIOT"は前作"WARNING"さえ含んでると感じるところも好印象の一因です。
 進化し続けるグリーンディが新しい領域に踏み込んだとかまったく感じず。ただただ帰ってきたという感じです。




 タイタニックのラストシーンは、その後の人生をしっかり生きてきたおばあちゃん(ベッドの横の写真をなぞるシーンは物理的には海に浮くはずのジャックが何故か沈んでいくシーンより良いシーンだ)がタイタニックに帰っていく、というものでした。僕にとって"AMEICAN IDIOT"はそんなそんな感じです。


 めんどくさいけどこれ言わなきゃいけないから最後に一つ。僕自身は「サイトについて」で明言してる通り著作権を放棄してますが、他のレビュアーに関してはその限りではありません。上記文章の著作権は、書いた人に属しているとお考えください。
 もし上記文章をコピペして自分のサイト等で公開し、自分が書いたように振舞いたい人は、それぞれのレビュアーの方にその意向を伝えて許可を取ってからにしてください。




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