update2004.4.3

Mongol800 / 百々 (2004.3.18)

 約2年半ぶりのリリースとなるモンゴル800通称モンパチの3rdアルバム。今回の音楽テキストでは自称「モンゴル799」である榎本が「いやあ惜しかったなあー僕がブレイクする予定だったのにぃー1コ早かったなあー」などの想いを込めながら、この3rdアルバムの売れ方を予想しようと思います。その参考のため、最初に彼らの音源リリースの時期を記しておきます。
 2000.04.07 1stアルバム Go On As You Are
 2001.09.16 2ndアルバム Message
 2003.12.06 1stシングル ヨロコビノウタ
 2004.03.18 3rdアルバム 百々
とまあ、こんな感じ。以上は大きな流通にのったもの限定です。デモテープとか、もしかしたら存在する「幻の音源」などは含みません。
 それじゃ、以下どうぞ。



 ロックバンド(ロックアーティスト)にとって、音源をリリースするごとにその内容を「どう変えていくか」というのは、1つの重要なテーマであります。まったく同じような楽曲を並べても面白くないと感じるリスナーを生んでしまうし、方向性を変えすぎると前作の雰囲気を期待したファンに「なんだこりゃ?」というコメントを返される。
 そんなリスナーの声をあまり意に介さず同じスタイルのみを続けたり、またその反対に常に変わり続けたりするバンドもあれば、前述の「どう変えるか」「どんな音源をだすか」のバランスにこだわるバンドもいる。
 このモンパチのアルバムは1st、2ndの繋がりとして、上手いなあと思いました。3枚続けて聴いて違和感なく、それでいてバンドの変化を楽しめるものだと思います。「1stのほうが圧倒的に良い」「2ndのあの曲が好きだった」などのピンポイントでの思い入れがとくに無く、1stと2ndの両方好きという人にはたぶん良いアルバムです。

 ところが、楽曲という面ではこのようなアルバムでも、今回のアルバムは決して2ndを越えないでしょう。それは、トータルセールスおよびチャートアクションという点に関して。2ndが驚異的ヒットを生み出したモンスターアルバムであることからトータルセールスはまあ無理として。それを差し引いてもチャートアクションとしては「あれ?早めに失速したなあ」という状態になるんじゃないでしょうか。5月くらいには、HMVのジャパニーズ・ポップス―インディーズチャートで、25位の圏外に落ちる気がします。
 極端にスタイルを変えて評判が悪くなるわけでもなく、すごく良い意味で「彼ららしい」アルバムをリリースしたのに、何故こうなると予想するか。

 予想の理由は。「2年半というインターバル」が全てです。



 1stアルバムリリース時である2000年頃のモンゴル800は、中高生を中心とするインディーズ/ライブバンド大好きキッズの間では大注目の存在でしたが、しかし世間一般での認知度はさっぱりでした。実際、今ほどチャートや新作チェックなどをしていた訳でなかったこの頃の僕は、家庭教師をしていた高校生にモンゴル800を教えてもらいました。
 ところが2ndアルバムはCMで楽曲が使われた効果もあって、キッズ以外に(例えば彼らの友人とか)買う人が増え、さらにコンビニなどの有線で流れるようになり、世間一般でのモンゴル800の認知度が高まりました。

 その結果。チャートアクションとしては空前のロングヒットになります。

 2001年9月以降、世間一般でのモンゴル800の認知度の高さが如何に突出していたかは、同じ頃(少し前)にリリースされたモンゴル800以外の日本のインディーズ/ライブバンド勢の音源である、
 ガガガSP / 線香花火 (2001.8.10)
 175R / From North 9 States (2001.6.13)
 B-Dash / ○ - マル - (2001.8.15)
 BRAHMAN / Forlorn Hope (2001.6.27)
などが「インディーズチャートとしてはかなり上位にいて、そのバンドは後に相当なブレイクを果たしているが、しかし当時は世間一般での認知度がまったく低い」ことを例に挙げれば伝わりやすいと思います。
 普通にラルクとかが好きだった人が、モンゴル800のブレイク現象によってインディーズ/ライブバンド勢にとっての買い手市場に変化したと思います。簡単に言えば、CD屋のインディーズコーナーに関心を示すようになった、と。175RのブレイクもガガガSPの晩秋の激売れも、こんな背景が一因じゃないでしょうか。



 話を元に戻すと。なぜ今作が売れない(もしくは、チャート的な失速が早い)かと言うと。「2年半というインターバル」が全てです。単純な話のようで、これによって2つの現象が発生すると推察します。

 1つ。いわゆる「キッズ」たちの反応。この買い手勢は軒並みリリース直後に購入します。2年半待ったのですから当然のリアクションでしょう。ただし、比率的にだいぶ増えたと思いますがそれでも世間一般では少数派です。現在の「インディーズチャート1位」に貢献してますけど、ロングヒットを生む燃料にはならない。
 そしてもう1つ。キッズじゃない購入層、言い換えればガガガSPや175Rを2001年当時に知らなかった、さらにモンゴル800に関しても2ndを1stと勘違いしたり、1stは「売れていない」と認識している層。長々と説明しましたが全部ひっくるめて「モンゴル800のブレイク現象以降にこっちも聴きだした」という層。
 この購入層は元がJ-POPファンなので、2年半は「飽きる」のに充分な時間だと思います。安室奈美恵とか出産・活動再開後とか明らかに「飽きられて」人気が低迷してましたし。さらに、モンゴル800が突破口となって日本中に広めた別のバンド群に興味が移ってる可能性もあると思います。

 上記2つの推察より。2ndアルバムがモンスターアルバムであるからトータルセールスで及ばないのは仕方ないとしても、それ以上に「意外にチャートからすぐ落ちる」のではないでしょうか。1st、2ndと内容的には「上手い変化」を持たしているにも関わらず。



 それでも。このモンゴル800というバンドはセカンドの大ブレイク後でも小さい会場での無料ライブをやってましたから、そんなにセールスとかを気にしているように思えません。もちろん、売れれば嬉しいでしょうし、お客さんがたくさん来て盛り上がってくれるライブが楽しくて仕方ないでしょうが、売れなくなったことやセールスがセカンドを越えなかったことでバンドの持ち味ややる気を失うこともないように思います。それ以外の部分に価値観を見出して活動していると僕は信じています。



 お気に入りは「5. あるがまま」「7. リリー」「9. カジュマルの木」。




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