update2005.3.3

サンボマスター / サンボマスターは君に語りかける  (2005.1.19)


 青春パンクくんの中で何故か確立してしまった「ダサくてもそれでいいんだ」という超逆説的ドパンクな主張。目立つところではオナニーマシーンやGOING STEADYが童貞絶賛(?)ソング路線でローティーンボーイの心を掴んだのはまだそんな昔のことじゃないと思います。
 ただ、彼らがステージ上でそんなことを口にしながらパフォーマンスを行っても、「童貞ソングを歌う奴らって本当に童貞だよな」と信じている童貞キッズなど居ないのが現実。「ナンバーワンにならなくてもいい、オンリーワンのほうが特別なんだ」とオリコン1位のスマップが歌ったところで「良い歌だよね」「だけどおまえらナンバーワンじゃねえか」とツッコミが入るのと同様に、要は主張に共感が得られても説得力がない。日本産業ロック業界にダサい、カッコ悪い、そんな主張に説得力を持たせて歌うキャラクターはいないのか。

 そこで登場したのが自他共に認めるダサい&ブサイクである山口隆氏率いるサンボマスター。秋葉系ファッションも相まって強烈なキャラクターです。彼らに対しスタイリストに伊賀大介を起用しているソニーミュージックの意図がまったくもって読めません。何考えてんだよ。

 彼らのサウンドは「言葉にできないからギターを弾くわけです」を合言葉に展開される、ストレートな日本語歌詞のロックンロール。「〜なわけです」「〜なわけじゃないですか」を連発する押し付けがましいヤツ(インターネットにもたくさんいるわけじゃないですか)を何かの間違いで音に変換したかの様にひたすらうるさく、感情的に掻き鳴らされるのが彼らのサウンドです。いやあ、テレビで何度か見たけど彼らのステージパフォーマンスはマジで暑い、を通り越して暑苦しいよ。満員電車で汗拭いてる人のイメージ。
 そんな彼らが世に放ったこの2ndアルバム、"サンボマスターは君に語りかける"がオリコンウィークリーアルバムチャートに初登場5位とい好記録を残しました。タイトルからすでに暑苦しさを感じるわけじゃないですか。この暑苦しさゆえにに冬だから売れたか、とか邪推しつつ。マジメな話これは事件ですよ。





 例えば。「インディーズ/ライブシーンのバンドと初めからメジャーレコード会社から音源リリースしたりするバンド(こちらはアイドルやユニット含む)の違いは?」と聞かれたら、何と答えるだろうか。
 この問いに対しては商業主義に関することとか、音楽の方向性の主権がどこにあるのかとか、いろいろと返答の仕方はあるだろう。一概に言えないからこそ多方面に言及が及ぶのは当然のことだ。そして僕はその返答の中に「ステージ上の衣装」についての言及を含めるでしょう。

 これはさり気ないけど絶対には外せない点です。一つ例を挙げればガンダムの曲でブレイクした"HIGH AND MIGHTY COLORS"がネットでライブ映像を配信することでいかにも「ライブが得意なロックバンド」という印象を与えるプロモーションを展開していますが、パリっと着こなしたステージ衣装がそれを雄弁に否定してるわけじゃん。それはライブじゃなくてライブショウでしょ、みたいな。
 昔ハイスタのスローガンみたいなので「普通の格好した兄ちゃんたちが普通じゃない音楽を演る」という言葉があったのですが、この言葉がこの「衣装に関する事象」を端的に表しています。もちろん例外と呼べるものはいくらでもありますが、インディーズ/ライブシーンのバンドは明確なステージ衣装を持たず、日常生活をそのまま持ち込んだファッションでステージパフォーマンスを行い、そしてパフォーマンス終了後にステージ降りてもそのままの格好で客席に溶け込むことができる。これは初めからメジャーな人たちとインディーズ/ライブシーンの人たちの明確な違いの一つです。

 ところが、バンド側がいくら普通の格好、衣装とは異なる日常的なファッションであるとは言え、キッズもバンドもある程度のファッションスタイルがなんとなく確立しているのが現状でして。つまりはキッズのファッションが画一(かくいつ)的になってるしステージの上に居る人も画一的なのがライブハウスでは当たり前の光景になってます。
 つまりはそんなファッションの人たちが所属する業界となった。SMARTとかWARPとかのファッション誌のモデルと読者の関係がそのままライブハウスで成り立ってる、と言っても過言ではないでしょう。





 ここでサンボマスターに話を戻すと、サンボマスターはそのなんとなく確立していたインディーズ/ライブシーンのファッションスタイルの壁をぶち破った。しかも秋葉ファッションでだ。さっきの例で言うならばファッション雑誌のモデルでも読者でもないところからギターと暑苦しいメッセージでライブハウスに乗り込んた挙句にオリコン5位。これはけっこうな事件じゃね?
 彼らの音楽に目新しい部分は感じません。実際に口にしたら恥ずかしくなるようなストレートな言葉で暑苦しくギターを掻き鳴らすのはそれ程新鮮味があることじゃないわけじゃん。だからこそ本当にダサルックスな方々が青春おパンクが文字通り真っ青な歌詞で登場し売れた部分に僕は非常に注目してます。正直、アルバムはそんなに一生懸命聴いてない。

 何でもそうだけど、一つ売れる解り易いフォーマット(しかも今までかなり盲点だった)ができれば、そしてそこに市場が広がっていれば、フォロワーは必ず生まれます。法律や裁判をテーマに番組作りました、僕たち沖縄出身です、俺たちミクスチャで地元で悪そうなヤツはだいたい友達です、ルックス重視のかわいい子をアイドルロッカーとして売り出しました、などなど。一つ成功すれば続々と似たようなものが登場するのは資本主義の経済活動の面から見ても何かに影響を受けて創作活動をするアーティストな面から見ても自然な現象でしょ。
 このサンボマスターが秋葉ロックマーケットのパイオニアと呼ばれるほど、これから後にたくさんのフォロワーが生まれるか?これは目が離せませんよ。まあ彼らはこのファッションだから売れたわけじゃなくこのファッションでも売れた、という点は見逃せないけどね。その意味ではフォロワーは難しいか。
 フォロワーが生まれなければ、彼らはナンバーワンじゃなくオンリーワンになれるでしょう。スマップを越えちまえ。


オフィシャルサイト:http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Keyboard/4356/




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