update2005.4.13

SOCIAL DISTORTION / SEX,LOVE AND ROCK'N'ROLL  (2004.9.28輸入盤)


 先日、ギターウルフのベーシスト、ベースウルフことビリーが死去しました。享年38歳。故人の冥福を祈ります。

 日本の「うるさいロック」の世界において、彼らの硬派なスタイルを支持する向きが多かったと思います。また彼らの奏でるストレートなロックンロールサウンドは多くの現役バンドに影響を与えたことでしょう。
 ギターウルフというバンドが今後どうなっていくのかは解りません。しかし、少なくともメンバーの死去ということによって一つの形が崩れてしまったことは間違いなく、個人的には日本のうるさいロックの世界からでかいエンジンがなくなってしまったような喪失感を感じます。非常に残念です。

 ロックの世界も人間が作っていく以上、こういう事態は往々に起きるものです。過去にもこのような事例はいくらでもありました。そして今回のこのニュースを知ったとき、僕の頭にひとつのバンドが思い浮かびました。それがこのSOCIAL DISTORITONです。
 今回紹介するこの"SEX,LOVE AND ROCK'N'ROLL"は昨年末に発表されたアルバムですが、結成・活動開始から20年以上が経っているのにようやく6枚目というアルバムです。これ自体が8年振りのリリースだと言うことを差し引いても、同郷・同期のBAD RELIGIONが"THE EMPIRE STRIKES FIRST"で13枚目のリリースであることを考えると非常にロウペースであることが伺えます。
 このロウペースな活動に一役買っているのが、彼らのバイオのなかで絶対に外せないエピソードである「ヴォーカルでありフロントマンであるマイク・ネスが麻薬中毒者として刑務所生活を送っていた」です。そんな苦難を乗り越えて活動を続けるSOCIAL DISTORTION。

 このバンドに再び訪れた事件は2000年の、DENNIS DANELLの死です。享年38歳。





 メンバーが死を迎える。ロックに限らず、ショウビジネスの世界が人間によって成り立つ以上、この「人の死」というアクシデントは付き物です。交通事故死。自殺。ドラッグ摂取量過多。枚挙に暇がありません。
 一人のシンガーの死ならばファンがその死を悼むことで終わってしまうのですが、ロックなどのバンドの世界だとそこには残されたメンバーがいる。ここで残されたメンバーはどんな答えを出すのか。解散か。活動を続けるか。新たなメンバーを向かえで再出発か。
 この残されたメンバーの答えと言うものが、ロックを追う者としては(過去に遡るという意味も含めて)非常に興味深いことになってしまいます。

 そしてSOCIAL DISTORTIONの答えは、このアルバムに詰まっています。

 これはまさに、デニスに捧げるに相応しいアルバムであると思います。まずジャケットから行って祭壇にギターが飾られてるものですありますからね。
 そして彼らがメンバーの死を悼むかのように、そのメロディはあまりに悲しいものです。ジャンルとしてのカテゴリはあくまでパンクロック。しかしポップさもハードさも余分だと言わんばかりに排したこの音は、とてつもなく悲しい。

 また、個人的にこのアルバムタイトルに非常に意味を感じてまして。普通、パンクの世界で言ったら"SEX,DRUG AND ROCK'N'ROLL"ですよね。ところがDRUGがなくなり、代わりにLOVEという単語が入っている。これは麻薬中毒から更生したマイク・ネスならではの言葉であり、それを死別したバンドメンバーに捧げるというのは意味深く感じます。俺はバンドがあったからドラッグを止めれた、その代わりラブを手に入れたぜ、みたいな感じじゃないでしょうか。





 とまあ、こんな具合に。結局、ここまでバックストーリーができてしまったが故に、きっと上記のような感想を抱く人がほとんどだと思う。つまりは、文字ロックとしてはとても書きやすい素材だ。マイク・ネスやバンドのダークな面にスポットを当て、「彼らが苦労を乗り越えてリリースしたアルバム」「バンド結成時からの盟友に捧げるべき作品」そして「必聴」「名盤」。そんなありきたりな結言になんざちっともパンクを感じねえっつうのマジで。

 たぶん、このアルバムはそんなサイドストーリーを知らずに聴いたほうが実は深いんじゃないかと思う。彼らのサウンドは本当に悲しいメロディなんですが、彼ら自身の多難な生き様を見てしまうと、そっから感情移入してしまうんじゃないか。悲恋な映画を見た後の、主題歌が胸に染みてしまうように。
 ロックの背景にあるものってのは確かに大事だけど、その背景に見とれて本質が見えなくなるのでは元も子もない。
 僕自身は既に彼らのバイオをいろいろ知ってしまっている。だからこそ、そんな彼らの背景を投影する聴き方と、また極力余分な情報を排した聴き方の双方をしようという姿勢でいるが、まったく知らずに聴く、ということはもちろんできない。「どんな人たちがやってるパンクなの?」ということを知らずに聴いた場合、どんな感想を抱くのだろうか。

 「パンクは明るくてノリが良い」「元気が出る」と信じているキッズに、何も知らずに聴いてもらいたい一枚です。


公式サイト:http://www.socialdistortion.com/
小ネタ・・・上記公式サイトをEXCITEとかでWEBページ翻訳すると、マイク・ネスの名前がネッシーで有名のネス湖になったり、「回転ドア会員資格」とかいう摩訶不思議単語が見れてちょっと面白い。




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