THRICE / THE ARTIST IN THE AMBULANCE (2003.10.29)
カリフォルニア出身の4人組み。最初に彼らの名前を紹介させていただくと。
ダスティン・ケンスルー(vo.g)
テッペイ・テラニシ(g.vo)
エディ・ブレッケンリッジ(b.vo)
ライリー・ブレッケンリッジ(ds.vo)
見て解るとおり。ギターのテッペイ(漢字で『哲平』)はアメリカ生まれのアメリカ育ちですがちゃんと日本語も話せる日本人でして(そのため今週末のソニックマニアでなかなか楽しいマイクパフォーマンスがあるかなあと期待)、この人がメタル大好きもあるためにこのバンドがパンクバンドの方向性で活動しつつ、ギターにメタル要素を与えることとなります。
故に、「パンク・ロック・メタル・バンド」という不思議な紹介をされているバンド。
メタルっぽい雰囲気だと、僕は「壮大な曲展開」というのがあると思うのですが、このバンドはそういう曲はあまりないようです。このアルバムのなかでメタルのような壮大な展開を見せる曲は「6. PAPER TIGER」その他ちょこちょこで、他の曲は程度の差こそあれ仕上げはあくまでポップパンクの域を出ていないように感じます。曲の長さとか3分前後ですし。
とにかくこのバンドが出している音「パンク・ロック・メタル」と評されるものは、「既存のもの2つを組み合わせ新しいジャンルを生み出している」という、いわゆるミクスチャーの発想です。
パンクがハードロック/へヴィメタルに反発して生まれた背景とかも考えると、この組み合わせはなかなかすごいかもしれません。新しいジャンルとして定着したら10年後とかに「メタパン」とか略されるのかな。
ただし、このバンドを「新世代」や「新たな時代の幕開け」などの文句を用いて、まったく「新しい」かのように扱うのはなんだか違和感があります。ちょっと前から「メタル・コア」なんて言い方があったというのも理由と言えば理由ですが、それ以上に、メタル面を拾ってもポップパンク面を抽出してもどこかで聴いた事あるようなものだからです。
新しい試みとして一時さんざん持て囃されたミクスチャーという発想・手法はもう大抵のものはミックスしきった感が否めません。もうミクスチャーは新しいジャンルを生む手法としての限界が来た以上に、ミクスチャーというジャンルが古くなってしまったんだな、ということだと思います。
ただ、最初に触れたんですが、日本人である哲平の存在のために、日本での位置付けが少し変わったものになるかも、と期待します。アメリカのバンドをそのまま輸入してきた、とはまた違う位置に立てるんじゃないでしょうか。SNUFFみたいに日本人気を誇るバンドになる可能性がありそうです。そういう自分だけのシーンを持ってるほうが(「新しい」とか言うとやや語弊があるんで言い換えると)「個性的」かなと。
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