update2004.4.22

V.A. / ROCK AGAINST BUSH VOL1  (輸入盤2004.4.20)


 ロックが世界を変えるというのは、ビートルズを生んだイギリス人の妄想だ。

 ロックは世の中を映す鏡だと、僕は思う。鏡は朝起きたときに寝グセを発見するための道具で、映っていた寝グセを直すのは自分自身だ。
 「ROCK AGAINST BUSH」という鏡をのぞいたとき、映っていたのは「まとまらないものを無理矢理まとめる姿勢」でした。



 そんじゃ簡単にこのアルバムのご紹介から。皆様ご存知NOFXの怖いデブ、FAT MIKEが中心となって行われているブッシュ大統領反対キャンペーンが繰り出すコンピレーションアルバムがこちら。SUM41、ANTI-FLAG、OFF SPRING、Jello Biafra、PENNYWISE、NEW FOUND GLORYなどなど挙げたらキリがないほどの豪華26組26曲、それで1200円くらいだった気がした。詳しくはこちらをどうぞ。
 一応「賛同したバンドが参加」だから、これに参加しなかったバンドはブッシュ派かなあとか穿った見方ができるのもこのアルバムのポイントですね。RANCIDとか誘われなかったか、ブッシュ派か。



 ブッシュ大統領反対という主張は、多様な主張の集合体だ。

 これは別に目新しいわけでも斬新な主張でもない。「ブッシュ大統領反対」は「経済政策がだめだった」「イラク戦争は犠牲が大きい」「とにかく戦争したから駄目」「顔が嫌い」などの様々な意見・主張の集合であり、さらには「以前は支持したけど最近は駄目」「アフガン爆撃から嫌いだった」「ていうか私は選挙のときに投票しなかった」まで時期にもばらつきがある。
 さらに多数派であろうと思われる戦争反対論は、純粋にシンプルな思考で「命は大切」「戦争反対」というモノから、どこぞの学者が唱えそうな「これ以上は国益にならない」という、命というものを金額に換算した分析のモノ、さらにアメリカ人らしくオーバーリアクションで主張しそうな「俺たちのソルジャーが虐殺された、もう嫌だ」のようなモノまで、幅があるだろう。これは当たり前の話であり、むしろそれが自然。
 ところがその多様な意見を持った人々が無理矢理に一つになって「ブッシュ大統領反対」という主張を掲げている気がしてなりません。「ブッシュのここが駄目だった」「じゃあどうすれば良いのか」そして最も重要な「では誰が大統領になれば適任か」という考えは違うのに、とりあえず「ブッシュ反対」。無論、選挙はイエスかノーかの二者択一の面もあるから、最終的にそこに行き着くのは解る。けど、議論をすっとばしての反対論が圧倒的多数というイメージがあるのもまた事実。

 もちろん、僕もブッシュ大統領は非常に問題があると思う。あの人は911テロの際、軍事力で支持率を上げることに味をしめすぎた。
 思い出して頂きたい。ブッシュ政権誕生の際の選挙のあの混乱ぶり、対立候補と見事に人気を二分し、「史上最も支持率の低い大統領の誕生です」と揶揄されたことを。それがテロ以降「みんなでテロに立ち向かおう」のスローガンで支持率を急激に上げたことを。

 イラクもイラクでよく解らない。インタビューで「自衛隊に居て欲しい」と答える人もいれば、撤退を求めて誘拐を起こす人もいる。さらに人質を「焼き殺す」と言い、「自国民の命を粗末に扱う日本政府に怒りを覚える」「日本人は大切な友人」と言う。友人を焼き殺すのは命を粗末に扱うことにならんのか。
 でもそのよく解らないバラバラの集団が、反米のスローガンの下に一丸となる。宗教の宗派も戦後のヴィジョンもフセイン政権をどのように生きていたかかも多様であった人々が、無理矢理に一つになっている。銃を持ってる人が兵士か国民かゲリラかテロリストか元フセイン派かも解らない。



 このアルバムは、そんな「無理矢理に一つになっている世の中」をよく現しているアルバムです。

 いや、楽曲の方向性が多様とか、そういうことではありません。みんな揃ってうるさいロックなので、「老若男女、家族みんなで楽しめる」なんて代物では決してありません。

 僕が言いたいのは。ここまで明確なテーマを示してる割には、いろんなバンドが集まったな、と。

 このアルバムに収録されているバンドは、賛同して集まったとは言え、全部が全部社会的メッセージの強いパンクバンドというわけでは決してありません。こういうメッセージのアルバムをNOFXが中心となってANTI-FLAGやJello Biafra(デッドケネディのヴォーカル)が参加するのはよく解りますが、SUM41やNEW FOUND GLORYは青春パンクだし、そのうえカナダ出身。いやカナダの人がアメリカ大統領選の選挙権があるかないか知らないけど(たぶん無いよね?)。
 なかでもOFF SPRINGの「BAGHDAD」(バグダット)はこのアルバムのためにいきなり作りました、テイストがたっぷりです。オフスプ、いままでこんなメッセージの曲はあまりなかったと思うんですけど。

 ところが「これがロックだ」と無理矢理に一つにまとめる。そうかロックかとリスナーは共感。日本のキッズまでそれに共感。まさにそんな社会を現しているアルバムです。
 色んな楽曲があり、いろんな主張があるけど、それが無理矢理に一つになってる気がします。

 世の中にはいろいろな主張があるのです。
 「われわれは国民を代表して、政府に言いたい!」
 勝手に代表するな、ボケ。



 と長々と書いてみましたけど、さっきもちょっと出たとおり「日本人は選挙権がない」から何やらいろいろ書いてある英文はすっとばし、安いーと喜びながら買って聴けばそれで完結してしまうアルバムです。まあコンピ盤なんてみんなこういう値段だし。あ、未発表音源多数てのは魅力の一つか。




back menu  site top





アクセス解析 SEO/SEO対策