update2004.8.30

X RAY SPEX / THE ANTHOLOGY(2001.10.19輸入盤fromUK)

 70年代後期いわゆるロンドンのパンクムーブメントのなかで活動した5人組パンクバンド。ポリー・スタイリーン(ヴォーカル)を中心に結成。このアンソロジー盤は79年に発表されたアルバム「Germ Free Adolescents」にボーナス・トラック10曲を加え、更に91年に発表された『Live At The Roxy』も追加した2枚組アルバム。



 個人的にロンドンパンクのバンドの中で、かなり好きなバンドです。だけど残念なことにあまりにも知名度がない。ていうか、これはもうストレートに言ってしまえばズバリ世間での評価が低い。それが残念でなりません。もっと評価されてもいいんじゃないかと声を普通よりほんのちょっと大にして言いたい。いや、ほら、僕控えめな性格だから。

 そんな知名度があまりにないバンドなんで、まずどんなバンドであるかをいつもより詳しく書いてみたいと思います。

 まず最初に名前を出したヴォーカルのポリー・スタイリーンですが、名前から判るとおり女性です。つまりこのエックス・レイ・スペックは初期パンクには数少ない女性ヴォーカルのバンド、ということです。そして次に、メンバーにサックス奏者がいること。
 このバンドの特徴は?と聞かれたら僕は以上2点が非常に大きいと答えるでしょう。以下、それぞれについて詳しく書いていきたいと思います。



 まずは女性ヴォーカルであるポリー・スタイリーン。彼女は19歳だった当時、セックスピストルズのライブを見た2ヵ月後にシングルをリリースしたほどの行動派な女性であったという逸話をパンク関連の書籍で読みました。
 ・・・なんて記述を見ると、まるで「2ヶ月でバンドを結成してシングルリリース」みたいな印象を受けますけど、まあさすがにそれは無理があるので実際はバンド活動中にピストルズを見て曲を書いてリリース、という感じだと思います。この本の記述も「2ヶ月でバンドを結成してシングルリリース」と明確に書かれてるわけではないので、まるで常に後方で指揮を執っていたと思われる稲葉一鉄の「戦場で一度も怪我をしなかった」みたいな逸話によって彼を勇猛な男のように感じてしまうとう、戦国武将のエピソードのような誇張は含まれてるかもしれませんが、まあとにかくそんな顔に劣らずほどのパワフルなヴォーカルがこのバンドの曲を全曲書いてました。
 それだけでもいかにこのバンドが「彼女を中心としたバンドである」ことが窺えると思います。

 その彼女の、張りのある歌い方がすごくハマる。

 このアルバムはアンソロジー盤ということで、CD2枚組みになってます。そしてCD2のほうがライブ音源なんですけど、そのヴォーカルの力強さはこっちのライブ音源で本領を発揮しています。
 あと歌詞カードの写真が、本当にサザエさんみたいな髪型にしてるのが笑える。ついでに何かのビデオでライブ映像が収録されてるらしく(僕は未見なんですけど)、そこではヘルメット被ってライブやってるそうです。それに関してネットで検索したら「驚くほど不細工」とパンク的には最高の賞賛を浴びておられました。



 次にサックス。これがそれぞれの曲を壮絶なまでに間抜けにしています。大事なところだからもう一度言います、壮絶なまでに間抜けにしています。
 サックスなどの管楽器を含むパンクと言ったらやれスカコアだ、スカパンクだ、なキッズにとっては食ってる飯を噴出すほどのものだと思います。これがパンク?なんて腑抜けた音だよ。超脱力。TAMURA信者もびっくり。

 パンクロックの特徴とか、パンクが好きだって言う人に「パンクのどのへんが好き」と尋ねればきっとこんな答えが返ってくると思う。「反体制的なところ」「刺激的なところ」「実験的なところ」。
 このエックス・レイ・スペックこそが実験的精神むき出しなバンドじゃね?と僕は思う。前述したとおり、このバンドのサックスはパンクらしさを見事にぶっこわしている。
 これこそが実験的なものじゃねえの?と思う。



 同じようなバンドが続けて登場する、いわゆる「ブーム」という状況のなかで、キャラを確立したエックス・レイ・スペック。本当にもっと評価されるべきだとつくづく思うわけですが、ただこのバンド、アルバムを1枚のみリリースしただけであっさりと解散、その後ポリーがクリシュナ教にのめりこむ(まさに行動派!)ことによってそのまま世の中より消えていってしまいます(一回再結成しましたが)。

 代表曲であり僕も凄く好きなナンバー「identity」の意味は「個性」。納得のタイトルじゃない。ちなみにアルバムタイトルでもあり曲名でもある「Germ Free Adolescents」をエキサイトで翻訳すると「細菌暇な青年」。どんなヤツだよ。




back menu  site top





アクセス解析 SEO/SEO対策