update2003.8.31

マイクロフォンからの手紙


 1通目の手紙 ―――

 この手紙は誰に宛てて書いてるわけじゃないけど、これから俺がやりたいことをちゃんと記録に残したいんだ。だからこの手紙を書く。

 俺はいつもステージで孤独だ。マイクスタンドがないと立つことができない。もしくは、ステージに立つ人間が持たなければ立つことができない。ただのマイクだ。俺は友達にも「よく喋るよね」とか言われるが実はそうじゃない。喋っているのは人間だ。俺じゃない。
 ああ。俺もいつかステージの上で、自分の言葉で喋ってみたいんだ。誰かの受け売りでもなければ、人間の喋る言葉をそのまま繰り返すので無く。自分の言葉で喋ってみたい。いや、いつか必ず実行するから、この手紙を読んでるあなたには、最後まで見ていて欲しい。


 2通目の手紙 ―――

 今日、マイクスタンドにステージ上で自分の言葉で喋りたいという話しをしたら、真剣に止められた。馬鹿なことはするなって。そんなことをしたら俺は不良品扱いされ、処分されると。俺は処分されることの本当の恐怖を解っていないと。
 でも、自分の言葉をみんなに伝えたいんだ。その想いは日に日に強くなる。一度で良いから、ステージの上で自分の言葉で喋りたいんだ。それさえできれば、後はどうなってもいいとさえ思う。


 3通目の手紙 ―――

 明日。えらい政治家が演説をするそうだ。そこで俺はひな壇の上の小さいマイクスタンドに乗せられる(こないだ相談したマイクスタンドとはまた別人だ)。いつもなら政治家の演説を会場の人達が聞きやすいように大きな声で再生する。しかし、明日の俺はそうはいかない。いつもどうりじゃない。自分の言葉で喋るんだ。  本当は、処分されるのがちょっと怖い。でも、それを上回る衝動(欲求?)が俺を動かすんだ。この手紙を読んでくれている人、あなたが誰か俺は知らないけど、解ってくれるだろう?


 4通目の手紙 ―――

 親愛なるあなたへ

 手紙はこうやって書き出すんだと教えてもらったよ。本番30分前だ。もうすぐ俺はひな壇に乗せられる。いよいよ、自分の言葉で喋ることができる。みんなに、人々に、俺の言葉と声を届けることができる。もし、処分されなかったら、もう1枚くらい手紙を書けるかもしれない。

 じゃあ。行って来ます。



 5通目の手紙 ―――

 親愛なるあなたへ

 紙と鉛筆があってよかった。これで手紙を書くことができる。最後の手紙だけど。今まで、誰にも宛てていない手紙を何通書いたっけ?偶然でいい、誰か全部読んでくれるといいな。

 俺は今、この手紙をこの不燃物ゴミ捨て場で書いている。

 俺のように人間の言うことを聞かない不良品は要らないと言われた。だから捨てられた。だけど、自由に、自分の言葉をみんなに伝えることは素晴らしいことだし、貴重なことだと思う。俺にはそのチャンスが一度だけあって良かったと思う。
 電池だけは使えるという理由で無理矢理に 腹 か ら 抜 か れ た 。そ の た め 電 源 が 供 給 さ れ な い か ら 、 次 第 に  意  識  が  遠  く  な  っ  て      く      が 解  る 。

 こ  れ  が  、  処  分  さ       る  と  言  う            か 。

 後 は 、 いきれ な の  が  、  俺   の   情   け   な  ぃ  ・




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