BORIALIS / what you thought you heard (2004.4.14日本盤)
96年にアメリカ東海岸、ニュージャージー州で結成されたミクスチャーバンド。MCヴォーカルでありかつBORIALIS(ボリアリス)の曲作りをするバンドの中心人物、アゴヒゲが素敵なリック・ダルージの他、ギターギターベースドラムターンテーブルの合計6人編成。
この手のバンドが今時1stアルバム(彼らの公式サイトには他の音源が紹介されてないので1stかな、と思います)でデビューしかも日本盤で売り出されるってのは相当不思議な現象ですよ。それはともかくサマソニの東京2日目にメインステージ出演で今が旬なバンド。
新しい要素はない。
このバンドを文字で表現する決まり文句であり、それは確かに事実です。こんなバンドは一時のミクスチャーバンドブームもあってたくさん世の中に出ました。上で「この手のバンドが」「今時」と書いたのは、そのあたりが所以であります。
でも何時ごろからかな、もう商業的な音楽では旨みが無くなってしまったのか、新人バンドが雑誌などで紹介されるとき、ミクスチャーという単語を使って紹介されることが極端に少なくなった。ミクスチャーという単語が死語になってしまったわけです。
たぶんプロの音楽ライターの人とかはミクスチャーという単語を使うのにきっと苦労してるんだろうな。むしろ使うのが恥ずかしいくらいの勢いじゃね?仮に使ったとしたら、その後で「あえてこの言葉を使いたい」みたいなフレーズを添えて、その単語を使ったことを論理的に正当化するくらいの細心の注意を払ってるはずだ。
お金を貰って仕事する(音楽に関する文章を書く)ってのはそういうことなんでしょうね。愛して止まない音楽に対しそんな苦労するなんて、可愛そうなこった。
趣味でサイト上に好き勝手に音楽テキスト書いる僕は音楽業界をリードする立場じゃないから、未だにリンキンパークを「超かっこいいミクスチャーバンドです」って会社の女の子に紹介してるのに。
そんな新人ミクスチャーバンド冬の時代に、ミクスチャーという単語が使われなくなった時代に。みんなBORIALISを紹介するとき「ミクスチャー」という単語を使う。彼らを文字で表すのに、既存のジャンル用語を使おうとすると、この言葉が一番解り易いもん。
このバンドに新しい要素が無いって?何言ってるんだよ、多くの人に「ミクスチャー」という単語を使わせた、これが最高に新しい要素だよ。
バンドとして新しい要素が無いけど、ここまで使われなくなった単語を世間に使わせるってのは最高にかっこいいことだと思います。何度でも言ってやろうじゃない。彼らは最高にかっこいいミクスチャーバンドだ。
それに、新しい要素がないってのは、正統派ミクスチャーバンドであることの裏付けであり。正統派って、どんな音楽ジャンルでもやっぱりかっこいいよ。間違いなく支持者はいる。
とまあ褒めてみたけど、本当に新しい要素ないっすね、改めて。お兄さんビックリだよ。
俺は天才だ、腐った音楽は地獄に落ちろ系のメッセージをライム交じりに表現し、コーラスは合唱向きの解り安い作り。
でもいわゆるグルーヴ感は出しまくりだし音も軽くポップだし、まさにヒップホップというカルチャーの中にロックを取り入れた「ヒップロック」という感じです。
そんなわけで、そのヒップロックという言葉を絡ませた個人的に一番好きな曲「5. white trash (hip rock)」より歌詞引用。
You can't wait for this hip-rock style to end,
but sorry my friend the shit has just started again
ヒップロックの終焉が待ちきれないって?
悪いな友よ こいつはまだ始まったばかりさ
もしかしたら、ひょっとして。再びミクスチャーバンドブームを彼らが巻き起こすかもしれない。そのときは間違いなく彼らは新しい時代を作った新しいミクスチャーバンドだろう。
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