update2004.10.19

BRAHMAN / THE MIDDLE WAY  (2004.9.29)

 日本のロックシーンで最も高い人気を誇るバンドの一つ、ブラフマンの3rdアルバム。95年に結成のバンド。ヴォーカルのTOSHI-LOWが元non・noモデルの女優りょうと結婚したことも話題になった。最近りょう出演の月九ドラマ「ラストクリスマス」、第一話を見ちゃったから毎回見ようと密かに決意。
 ・・・と思ったら今週は仕事で見れなかったよ(上の文はだいたい先週の金曜くらいに書いてました)。まあどうせ最後の方で矢田亜希子の病気が再発して織田祐二が「俺はいなくならない」みたいな展開になるんだろうから、もういいや。エンジニアの人生はドラマよりコーディングに費やす時間のが多いのさ。




 「ギター、ベース、ドラムのロック形態でアジアの民族音楽(「仏教系」という言い方もできると思いますが、このテキスト内では「アジア」で統一します)のメロディを取り入れたロックがしたい」とバンド結成時に珍しく明確なテーマを持っていたバンド、ブラフマン。その為、メロディや音の使い方や雰囲気など、他のバンドに比べ個性派であることは間違いありません。ギターのアルペシオの多用とか。バンド名から言ってヒンズー教の神ですし。
 そんなわけでして彼らを紹介する際によく「アジア」というキーワードが用いられます。アジアな雰囲気、アジアンテイストなど。

 ただこれほどアジアアジア言われるとね、僕は逆に疑問を抱いてしまいます。
 ブラフマンからそのアジアテイストをとったら個性がないのか?

 これは映画やドラマで言ったら「●●の演技やキャラが物語の幅を広めている」みたいな解説と同じでさ。じゃその●●さんがいなくなったらその作品は見る価値ねえのかよ、と考えてしまうのと同じです。優しいけど、優しいだけの男じゃん。そりゃ確かに良いヤツだけどお世辞にも女にモテるタイプじゃない。




 僕が上記のようにやや挑戦的な言い方をしてしまうのは、今までがそんなに言うほどアジアテイストじゃねえだろ、という所が起因となります。
 ここであらかじめ正直に僕のブラフ歴を話すと、すでに廃盤になっている音源"GROPE OUR WAY"は未聴です。それを踏まえ。"WAIT AND WAIT"以降のリリースに関して、シングルが出たこともあってファンに人気が高い"DEEPS"、ライブ定番の"SEE OFF"、またAIR JAM2000のビデオに収録された"NEW SETIMENT"などはちっともアジアな雰囲気を持ったものじゃない。ましてや2ndアルバム"A FORLORN HOPE"はブラフマンからアジアテイストを削ぎ取ったものだ。メロコアバンドのブラフマンの音だ。

 つまり、彼らの曲の大部分がそこまでアジアな雰囲気じゃないだろ、というわけです。圧倒的に、アジアとか関係なくある意味無個性と呼べるほどの「かっこいいメロコアサウンド」。それがブラフマンなんじゃね?

 そんな理由もあってファンがアジアアジアと騒ぐのはいつも違和感あったわけです。もちろん、僕は彼らに「アジアテイストなんか無い」と全否定するつもりはありません。確かに"THAT'S ALL"のイントロはその後の曲の強引ま繋がり含めは今までのバンドにはあまり無い雰囲気だったし、"TONGFARR"は「モンゴル高原の青空の下を行くキャラバン隊をイメージした曲です」とか言われたらそれに対し説得力を感じ納得もするでしょう。
 でもそれはそこまで騒ぎ立てるほど、彼らのいかにも最大の特徴と呼ぶには部分的すぎると感じてました。彼らは個性派だけど、例えばほとんどをアイリッシュパンクで仕上げるDROPKICK MURPHYSやFLOGGING MOLLYのような徹底さを持つほどに至らない、偶にアジアンテイストを醸すぐらいの認識であり、僕のなかではそれに関して否定も肯定もできずでした。

 冒頭の「アジアテイストを取ったら個性がないのか?」という僕の疑問の答えは、とっくに"A FORLORN HOPE"で出されていたわけです。彼らはアジアンテイストが初めからそんなに多いわけでなく、基本的にはかっこいいメロコアバンド。




 個人的に、そんな微妙な感想を抱きながら見ていたバンドだったんですけど、この3rdアルバム"THE MIDDLE WAY"。そろそろ俺たち三十路だぜ、なんて自虐的なタイトルかと思ってたんですけどとんでもない。こりゃ本物のアジアテイストを感じる深みあるロックですぜお兄さん方。聴け。いいから聴け。
 前述のように僕は彼らのことを「言うほどアジアなバンドじゃないじゃん、かっこいいメロコアバンドだって」とか思ってたぶん、そのカウンターは激しいものでした。今までファンはこのアルバムの登場を予見してアジアアジア繰り返してたのか。千里眼もいいとこだよ。

 ネット上の意見で「アジアなテイストが薄くなった」なんてのもありましたが、僕はそんなこと決してないと思います。むしろアジアなテイスト満載じゃん。確かに「ロックバンド1stアルバム最高傑作論」に忠実な大人気アルバム"A MAN OF THE WORLD"と比較すれば、その出し方は随分違います。
 これは「方向性が変わった」という意見にも若干絡む言及なんですが、例えば1stアルバムの曲は解り易いほどのアジア民族メロディがブラフマンというバンドにぶちこまれたのに対し、3rdではブラフマンというバンドがそのアジア民族メロディというのを綺麗に取り込んでいるという感じです。
 具体例としては、1stのトラック3"ANSWER FOR..."とかアジアな部分を出すために無理矢理な編曲でしょ。それに対して3rdのトラック8"(a piece of)BLUE MOON"とか、比較的アップテンポでありながら雰囲気がしっかり出せた理想的な曲ですよ。
 あと比較の話繋がりをもう一点すれば、空間を感じるドラムの音が凄く綺麗なレコーディングです。これはコアっぽくないけど、今のブラフマンにはぴったりでしょ。トラック2"LOSE ALL"とかすげえ綺麗でお気に入りです。

 方向性の変化はあるかもしれませんが、これは書き方に困った音楽ライターが多用する安っぽいフレーズとしてでなく、本当の意味で「バンドの進化」と断言していいと思います(僕がこの言葉を使うのは珍しいですよマジで)。

 僕の感想として、このアルバムによって初めてブラフマンはアジアな雰囲気が一番の武器となるバンドとなったと思います。かっこいいメロコアバンドじゃない、何コアとか定義できるバンドじゃない。今まさに「中盤(MIDDLE WAY)」にして強力な下地ができたのでしょう。




 特定のバンドが好きというより自分が好きなうるさいロックバンドたちのシーンでの動きを追う僕は、それぞれのバンドがらしさを発揮するときもらしくなさを晒すのも基本的に好き。このサイト内の傾向ではらしさを出してくれる音源を高く評価する傾向があると思いますが、どれもこれも注目すべきエキサイティングな現象だと思ってます。
 ブラフマンは、遠回りをして彼ららしさを確立したと思います。このテイストを残しつつ、どんどんハードコアに傾倒して行ったら、もっと面白くなるでしょう。

 何せこれで「中道」だからね。高らかな宣言もいいところだぜ。


オフィシャルサイト:http://www.tc-tc.com/index_.html




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