update2003.8.19

劇場型アルバム
RANCID / INDESTRUCTIBLE  (2003.8.19)

 
発売日とアップした日が同じなのは、僕のサイト史上初のことです。アメリカの4人組パンクバンドRANCIDの、3年振りの6thアルバム。「rockin'on」誌の背表紙に広告を載せることがパンクなのかはさておき、アルバムのテーマは「死」と「喪失」。と言ってますが、明るくポップな曲が多い。


 このアルバムを聴いた感想として、「RANCIDを身近に感じることができた」といのがあります。僕自身、実はこのアルバムによって今までにないアルバムの楽しみ方をしました。

 そんで、「劇場型アルバム」という単語を考えてみました。

 今回のアルバム、全19曲(ボーナストラックは省く)なのですが、それぞれの曲に対し、バンドからコメント(解説)が書かれています。僕は日本盤を買ったのですが、日本盤は対訳のみならずそのコメントに対する日本語訳も書かれていました。
 それによって、各曲に対するバックボーン(背景)が見える。これが非常に面白い。僕は今まで、アルバムから流れる音と、歌詞カードを読むことにお金を払ってきたのですが、このアルバムではそれ以上に「曲の背景」そして「アルバム完成までのストーリー」を楽しむことができました。まさに「劇場型アルバム」

 例えば、今回のアルバムのもっとも代表的な曲である 2. fall back down は、曲だけ聴けばなんかレゲエっぽい音も混じっていて、「 ああ3rdアルバムの流れの曲なんだな 」 と上辺だけの解釈をしてしまうところでした。しかしそのコメントやライナーノート(日本盤についてる、アルバム全体の解説)より、その曲の背景としてRANCIDのメンバーたちがこの3年間の間に辛いことにぶちあたったが、しかしバンド内の友情を深め(インタビューでは『家族』である、とラーズは答えている)、それらを乗り越えていったことが分かる。
 これは非常に興味深いものだった。1つ1つの曲を、ただバンドが演奏しているという感覚から、RANCIDというバンドと曲が何らかの理由によって繋がっている部分が見えてきた。なんせ、これらのコメントがとってもRANCIDのメンバーの私生活、パーソナルの部分とダイレクトに繋がっている13. tropical london は、「 俺と別れたら大切な物を失うぜ 」 ととっても女々しい内容なんだけど、その背景に本当に奥さんと別れたことがあるんだから。
 すると、それぞれの曲に対し、カッコイイとか、レゲエ要素が強いだとか、そういう言葉で感想を現すのが馬鹿げてくる。そういう感想もありだとは思うけど、それぞれの曲が持つエピソードが、それ以上の感想を引っ張り出してくれるように思うのだ。映画を見て、「最後に主人公が死んじゃうところが可哀想だった」というのも立派な1つの感想だと思うが、そのときの役者の実生活や出演映画履歴などから、今見た映画の主人公が死ぬ、という演技にどんな意味が込められているのか探る、もしくは解ってくるというのも映画の楽しみ方の1つだと思う。
 劇場型犯罪とやらがマスコミの注目を浴びる現在だから。こういう劇場型アルバムがあってもいいと思う。ライブハウス以外の劇場音楽。ステージが2個あるバンドなんて、そうそうない。

 曲とバンドが繋がっている、なんて理屈では解りきったことなんですけど、このアルバムはそういうのが監督さんがメガホン持って撮影した映画を見ているように解りやすいアルバムであり(劇場型アルバム)、それらを2520円できっちり楽しめたんだと思う。

 僕は今回のRANCIDのアルバムを、あるバンドの演奏する曲の集合としてでなく、1つのストーリーとして楽しむことができた。その結果、RANCIDを身近な存在に感じることができたんだと思います。ライブ行って身近に感じる、とかとはまた別な意味で。



 大げさな前振りもできたところで、曲ごとに感想など述べてみたいと思います。1つ1つの曲に対し、カッコイイとか、レゲエ要素が強いとか、そんな既存の言葉を用いながら。

 1. indestructible
 「不滅」というタイトルどおり、消えそうにないどこかありきたりな曲ですが、歌詞にはRANCIDのアルバムテーマがしっかり前面に出されています。要約すると、「ジョー・ストラマーが死んじまっても、残した音楽がある限り人々の中に生き続ける、それは俺たちも同じく不滅だ」、というところです。英語を解さない僕には1曲目としては無難でありきたりすぎてしまった。英語圏の方はどんな反応なのか気になるところです。

 2. fall back down
 上でも少し触れた曲。ギターの音がとっても聴きやすい。

 6. out of control
  5thアルバム寄りな重い曲。いろんな音がずしんずしん。ボーカルにエコーまでかかって重さを表現。

 7. django
 メロディに強烈なインパクトがあり。曲全体になんか哀愁溢れるみたいな。

 8. arrested in shanghai
 最初聴いたとき、このゆったりメロディが GRIFFIN の FLABBY BASTARD と被ったため、「きっと、途中で一気に激しくなるに違いない」とか期待してたら、そのままのペースで4分10秒で歩き抜けてしまった(駆け抜けた、の遅い版)。レゲエ要素がパンク要素を越えちゃった曲。CLASHの曲かよ。

10. memphis
 曲の出だしから気に入ってる、ちょっと中毒性のある曲。やべえ、これはパンク云々レゲエ云々抜きにして、クセになるよ。途中のギターの「じょーーーー・・・・」とか。中盤や最後のギターのオモシロ効果とか。8 .arrested in shanghai より、こっちのが中国っぽいなあとか思ったり。

12. ghost band
 「 ghost band ! 」と叫ぶ判り易いコーラス(パンクでは重要な要素と僕は思う)が命の曲。ライブ向き。おおおおお---。「間違いなく別れの曲」とコメントされてるけど、言われるまで気付かないほどノリノリなメロディ。まあ、言われても「別れの曲」とはちっとも思えないけど。どんな別れ方をしたんでしょうか。

17. ivory coast
 5thアルバム的な速さが印象の曲。5thアルバムがRANCIDの最高傑作という人がいるかと思うけど、そういう人はこの曲が一番オススメだと思う。

18. stand your ground
 色んな食材をぶち込んで無理矢理作った、味の濃いミックスジュース。

19. otherside
 バックボーンにあるのがラーズの兄の死、という曲。でもノリはいい。これがランシド流、ということでしょうか。それはそれで、らしくて良いと思います。




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